有名ブログ「外貨の高金利は通貨安で相殺される」←必ずしもそうではない。フラジャイル5で検証しました。

2019年4月15日

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先日、投資界の超有名ブログ梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーさんでこんな記事が掲載されました。

記事内容はタイトルを見ればほぼわかる通り、

「新興国通貨の高金利は通貨安により相殺される」

という主張です。

水瀬さんも仰っていますが、何回目でしょうねこの話題。

結論から言うと

「利回りプラスになる高金利通貨もあるし、ならない通貨もある」

が正解です。

ベトナムドンは2000年以降利回り5%超

ベトナムドンはここ20年ぐらいで利回り5%超であることは当ブログで何度も言及してきました。

もし2000年に資金1000万円でベトナム金利生活を始めていたら、現在資産額はいくらになっていたか

10年前にベトナムの銀行に100万円預金していたら、現在日本円でいくらになっていたか—ベトナムの定期預金の実質利回りを計算

ベトナムドン以外の通貨で検証した結果も投稿済みです。

高金利通貨15ヶ国分の直近10年間実質リターン(ドルベース)を計算してみた

高金利通貨投資は必ず損するかのような主張は間違いであることは上の記事を読んでいただければわかると思いますが、それでも未だに誤解している方が多いようなので、今回改めて記事にします。

今回はフラジャイル5に絞って実質利回りを計算してみました。

フラジャイル5の実質利回り

フラジャイル5
ともに高インフレや経常赤字などの問題を抱え、通貨下落が進みやすい「脆弱な新興国5通貨」のことでブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドを指す。 

米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和第3弾の縮小開始により、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの5カ国の通貨が売り圧力にさらされるとして2013年に米国モルガン・スタンレーのレポートで命名された。
【野村證券 証券用語解説集より引用】

要するに、モルガンスタンレー認定「手を出してはいけない5通貨」です。

条件

2009年1月から毎年1年国債を買う。利子は再投資(=複利で運用)する。

2019年1月時点での円ベース利回りを計算。

10年国債ではなく1年国債である理由は後で説明します。

計算結果

通貨 利回り 名目金利 減価率 100万円投資
ブラジルレアル 7.17% 10.51% 27.96% 199.86万円
インドネシアルピア 5.55% 6.23% 9.55% 171.64万円
インドルピー 5.17% 6.84% 15.57% 165.78万円
トルコリラ -0.99% 9.49% 64.81% 89.66万円

※南アフリカは1年国債のデータが無いので除外。
※名目金利は10年間の幾何平均。
※100万円投資は、100万円投資していたらいくらになったか、という数字。
※インベスティングドットコム日本版のデータから作成。

ご覧の通り、フラジャイル5(南ア除く)のうちマイナスリターンはトルコリラのみ、他3通貨では利回り5%以上となりました。

経済成長率が高いと実質利回りも高いはず

高金利の理由というのはざっくり言って2つあります。

1. リスクプレミアム
リスクに対して付く金利で、経済が不安定であればあるほど高くなります。
2. 経済成長率が高い
経済成長率が高い国では、事業の期待リターンが高いため、高い金利で貸し借りが成立します。

新興国通貨は1と2の複合要素により高金利となっているわけですが、どちらの要素が強いかが重要です。

リスクプレミアム要素が強い高金利通貨はマイナスリターンに陥りやすいかもしれません(未検証)が、経済発展ゆえに高金利となっている通貨はプラスリターンになりやすいはずです。

基本的には実質金利=実質経済成長率なので、もしも金利を通貨安が相殺(=経済成長率を通貨安が相殺)するとしたら、その国のGDPや給与水準は外貨ベースでは永遠に変わらないということになってしまいます。そんなわけはないということは感覚的に理解できると思います。

新興国通貨で長期間金利固定は愚策

日本で買える新興国債券は5年とか10年の長期が多いようですが、ああいうのは手を出してはいけません。

新興国では経済状況が数年かそれ以下でめまぐるしく変化します。

そういう環境で金利を長期固定するのは危険です。

2000年以降のベトナムを例に取ると、インフレ率20%以上になり「ベトナム通貨危機説」が唱えられた時期もあったりして山あり谷ありでしたが、当然その時々の状況に応じて金利も上下してきました。

▼対ドル減価率と金利の推移(青線が金利、赤線が減価率)
ベトナムドン金利推移

ご覧の通り、対ドル減価率が10%に迫る年もありますが、そういう年は金利も10%以上になっています。

「長期で金利を固定するリスク」は先進国投資でもありますが、ちょっとした材料で経済が揺れ動く新興国ではそのリスクはより大きくなります。

1年国債や1年定期で回せば、経済状況に応じた金利を享受できます。

新興国債券を買わない方がいいのは同意

新興国通貨はプラスリターンのモノもあるよ、ということを示してきましたが、「新興国債券を買わないほうがいい」というのは同意です。

なぜなら日本の証券会社で買える新興国債券は残存期間が長いし、為替スプレッドも大きいからです。

また、5%ぐらいのリターンならわざわざ新興国通貨にチャレンジしなくても他に選択肢があるはずです。

まとめ

⚫フラジャイル5(南ア除く)でマイナスリターンはトルコだけ。他は利回り5%以上
⚫経済成長率が高い国の通貨は金利>通貨安になるはず
⚫新興国通貨で金利長期固定は危険
⚫新興国債券を買わなくていいのは同意

というわけで、

「発信元が有名ブログだろうが大手メディアだろうが、主張や言説を鵜呑みにしてはいけない」

ということを、100万回暗唱しなくてもいいので心に留めておいて欲しいです。

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自己紹介宮内健吾Ⓐ、29歳の時に資産たったの1500万円でセミリタイア。

少々の労働収入と投資収入でベトナム生活を満喫していたところ、コロナ禍で仕事を失い暗転。

詳しくはプロフィールをお読みください。