10年前にベトナムの銀行に100万円預金していたら、現在日本円でいくらになっていたか—ベトナムの定期預金の実質利回りを計算
◼️注意◼️
2019年7月以降、状況が激変しました。
・観光ビザでは口座開設できない
・ビザの期間内でしか定期預金を組めない
・定期預金を組めても、外国人口座はベトナム人口座より低い利率が適用される
よって、現在ではベトナムドン預金は以前より利便性が悪化し、収益性も下がっています。
この記事は2019年1月までのデータなので、ご了承ください。
計算プログラムを作りました → ベトナム銀行預金リターン計算機
ベトナムの銀行定期預金は非常に高く、2019年4月現在でSCBの8.50%が国内最高値となっています(12か月定期)。
ところが、
「ベトナムドンは通貨価値が下がるので実質利回りは低い」
というようなことを、あたかも自分で検証したかのように言う人もいます。
実際のところどうなのか、この記事では過去10年間の円ベースでの実質利回りを計算します。
ベトナムはなぜ高金利か
ほぼ金利0%の日本で生活していると、8%超の金利は異常に過大で理解不能に思えるかもしれませんが、経済の基本原則から考えると妥当な数字です。
経済学者のアービング・フィッシャーが提唱した「フィッシャー方程式」と呼ばれる式があります。
.
【野村證券「証券用語解説集」より】
.
実質金利は期待経済成長率に近づきます。
企業が5%のリターンを出せると予想した時、その企業は金利6%では資金調達しませんが、4%なら資金調達を実行します。
こうして金利は企業の期待リターンに収束していきます。
国全体で同様のことが起きるので、
実質金利=期待経済成長率
となります。
つまり、フィッシャー方程式を発展させて考えると、
名目金利=期待経済成長率+期待インフレ率
と結論できます。
ベトナムの期待経済成長率は6%台、期待インフレ率は2%台ですので、8%台の定期金利は妥当な水準と言えます。
新興国通貨は実質利回りが低いという通説
資産運用に興味がある方は
「高金利通貨(新興国通貨)は、通貨安によって利子が相殺される」
というような話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
ベトナム銀行は金利が高いそうですね。
数百万円を預けようと思うのですが、安全でしょうか?⚫ベストアンサーに選ばれた回答
金利が高い国の通貨で預金していた人たちはほとんどが損をしています。金利が高い国の通貨は長期で見ると必ず下落してしまうからです。
【YAHOO! JAPAN知恵袋より引用】
上記のやりとりは2012年のものです。
当時は1米ドル=80円の超円高で、新興国通貨も円に対して軒並み下落していたため、多くの新興国債券が元本割れとなり、「新興国通貨は儲からない」という言説が半ば常識として定着してしまいました。
では実際にはどうだったのかを検証します。
円ベースの実質利回り
2009年1月に100万円をベトナムドンに両替し、1年定期の複利で回し、2019年1月に円に再両替する。
※両替手数料は円▶ドンは0.5%、ドン▶円は送金費用も含め3%とする。
※10年間同じ銀行ではなく、高金利を提示する銀行にその都度乗り換えていく。
※税金は無し(5%源泉徴収と書いているサイトが散見されるが、これは以前の法律であり、現在は預金金利にかかる税金は無い。但し、日本居住者は日本で確定申告する必要あり)。
.
ベトナムの銀行金利推移
※このデータは主にベトナムの金利データサイトやベトナム語ニュースサイトなどの「200*年の○○銀行の金利はX%」といった記述を拾い集めまとめたものであり、必ずしもその年の最高金利ではない。
対円為替レート推移
計算結果
これらのデータを元に計算した結果がこちらです。
1億9332万ドンが4億9753万ドンになりました。
利回りは年9.58%です。
円換算では100万円が226万円になりました。
利回りは年8.52%です。
名目金利年平均9.58%に対して、通貨安は円に対して10年間でわずか10%程度だったことで、非常に高い実質利回りが実現しました。
インフレを考慮した実質利回り
2019年1月からの10年間で消費者物価指数は1.86倍になりました。
対インフレでの実質利回りは年3.30%という計算になります。
ただし、この数字は2011年前後の高インフレ期間の影響が大きいです。
2014年以降はインフレ率5%以下で安定しているので、ここ5年間の対インフレ実質利回りは4.63%になっています。
まとめ
種別 | 利回り |
ドンベース | 9.58% |
円ベース | 8.52% |
対インフレ | 3.30% |
10年前にベトナムドン預金を始めていたら、100万円が226万円になっていました。
ちなみに上記知恵袋の質問時点でベトナムドン預金を始めていた場合、2019年には円ベースで2.36倍、利回りは年13%に達していました。
さて、こういう記事を書くと、
「そんなの結果論じゃん」
という反応がたまにあります。
しかし私が言いたいのは、
「10年前にベトナムドン預金始めてたら儲かってたのに!」
ということではなく、
「世間で信じられている言説は、必ずしも正しいとは限らない」
ということです。
常識とされていることや、当然のように広まっている通説が本当に真実なのか、自分で思考・検証することは非常に大事だと思います。
複利については思い通りの人生をデザインする複利の魔法: 誰もができる最強の人生設計論が参考になります。
今回はベトナムドン利回りの高さを検証しましたが、ベトナムドン預金にはデメリットもあります。
▶ベトナムドン預金のデメリットやリスクを解説
2000年から金利生活を始めていた場合のシミュレーションはこちら。
▶もし2000年に資金1000万円でベトナム金利生活を始めていたら、現在資産額はいくらになっていたか
株との比較も検証してみました。
▶積立投資した場合、ベトナムドン定期預金とベトナム株、リターンが高いのはどっち?
Xで最新情報
Xアカウントは@MiyauchiKengoAです。著書紹介
2022年11月にKindle本を出版しました。
Amazon 売れ筋ランキング(無料本)
✔海外旅行ガイド部門1位獲得
✔歴史・地理部門1位獲得