ベトナム経済のイメージが2012年ぐらいで止まってる人多すぎ問題
先日ツイッターでこういう趣旨のツイートを見かけました。
「ベトナム政府は通貨安政策を採っているので、ベトナムドンは下がり続ける。
2007年から2011年でベトナムドンは円に対して大幅に下落した。
定期金利は高いがインフレ率も同じぐらい高い。
こういう国には投資しないほうがいい。」
結論から言うと、これは誤解や2012年ごろのベトナム経済状況に基づいた認識であり、現在の実情は全く異なります。
しかしツイッターだけでなくリアルでもこういうことを言う人によく会います。
「ベトナムってインフレすごいよね」
「ベトナムドンで預金しても(通貨安で)意味がないでしょ」等々…。
ベトナム経済が現在どうなってるかなど積極的に知ろうとしない限り情報が入ってこないので、いつの間にか最新情報と自分の知識が大きくかけ離れてしまうのでしょう。
そんなわけで、今回はベトナム経済についてよくある誤解についてまとめました。
ベトナム政府は通貨安政策を採っている?
これは間違った認識です。
そういう時期もあったかもしれませんが、少なくとも現在のベトナム政府はベトナムドンの下落を望んでいません。
先日も4月以降のドン安に関連し、ベトナム国家銀行は「必要に応じて介入する」と発表しました。
1. ベトナムは輸出品の原材料を輸入しているので、ドン安はコスト高に繋がる。
2. 対外債務返済の負担増大を防ぐため。
ちなみに2010年前後のドン安局面では、ドン下落を防ぐために介入を続け、その結果外貨準備高を激減させてしまっています。
2010年前後はベトナムドン大幅下落
2010年前後にベトナムドンが大きく下がったのは事実です。
2007年に1万ドン=約75円だったのが2012年には1万ドン=約36円まで下がりました。
実に52%の大幅下落です。
しかしこの時期は超円高時代です。
ベトナムドンが下がったのは確かですが、それ以上に円が高くなりすぎた異常な期間です。
上のグラフを見ればわかるとおり、2012年からはベトナムドンは上昇に転じています。
都合よく短期間だけ切り取ることが許されるなら、
「2012年から2015年の3年間で日本円はベトナムドンに対して33%下落した、極めて脆弱な通貨」
と言ってしまうことも可能です。
ベトナムドンの下落は緩やか
2000年以降の19年間でベトナムドンは米ドルに対して約39%下落、対円では約35%下落しています。
年率では2%に満たない程度の下落幅ですので、一般的なイメージに反してベトナムドンの通貨安ペースは緩やかであると言えます。
インフレ率が高い?
「ベトナムはインフレ率が高い」というのも2010年前後に形成されたイメージです。
ご覧のとおり、2008年に23%、2011年に18%という高インフレが発生しました。
しかし2014年以降は5%未満の水準で安定しています。
ベトナムドン預金の利回りは常にプラス
このブログで何度も書いてることですが、2000年以降でベトナムドン定期預金の金利は常に対米ドル為替下落率に勝っています。
つまり、常に実質利回りがプラスということです。
▼ベトナムドン預金金利(12か月)=赤線と対米ドル下落率=青線の推移
上図の赤線と青線の差が実質利回りとなります。
2012年あたりは凄いですね。
米ドル下落率はマイナス、つまりベトナムドンが上昇してなおかつ金利は14%だったので実質利回りは15%ぐらいになりました。
2000年以降からベトナムドン預金を始めていた場合の年率利回りは6%近くに上ります。
参考▶もし2000年に資金1000万円でベトナム金利生活を始めていたら、現在資産額はいくらになっていたか
まとめ
ここ5年ほどベトナム経済は安定していますが、それ以前の情報に引きずられている人が多いようです。
新興国経済は短期間で状況が大きく変わる上に情報が少ないので、いつのまにか知識が陳腐化していることがよくあります。
常に意識して情報をアップデートしていかないと的外れなことをドヤ顔で言う痛い人になってしまうので、私も重々肝に命じてなるべく最新情報をインプットしていく所存です。
先日ミャンマー経済はヤバいという記事を書きましたが、これも5年後には全く状況が変わっているかもしれません。
参考▶金利8%のミャンマーの銀行で口座開設~ミャンマー経済のヤバすぎる現状をベトナムと比較
⚫ベトナムニュースライナー「ベトナム中銀局長:必要に応じ市場介入=通貨ドン安で-動向を引き続き注視」2019年5月23日
⚫みずほ総合研究所「ベトナム経済はなぜ安定しないか」2011年10月20日
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